少額から不動産に分散投資ができるJリートは投資家の人気の投資先となっています。
2001年に最初のJリートである日本ビルファンド投資法人が上場してから、現在では58銘柄が上場しています。
時価総額も15兆円という規模になっています。
ただ上記を見ていただければ分かりますが時価総額は直近下落が続いています。
実際、東証REIT指数(配当込み)のリターンはTOPIX(配当込み)に逆転を許しています。2021年を天井として3年間軟調に推移しています。
株式市場が堅調だったのと比して対照的な動きとなっていますね。
Jリートに興味を持っている方や、既に投資をしている方は以下の点について気になっているのではないでしょうか?
- そもそもなぜJリートは下がっているのか?
- Jリートはどこまで下がるのか?
- いつ買い時が訪れるのか?
今回はこれらのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
Contents
Jリートの仕組みとは?
まず本題に入る前にJリートの仕組みについてお伝えしていきたいと思います。
Jリートの正式名称は不動産投資信託です。つまり、不動産を投資対象とした投資信託ということです。
Jリートにはそれぞれの用途の特化型や複数の用途の「複合型」や「総合型」などのタイプがあります。
また、リートは得られた利益の90%以上を分配することで、残りは免税となる仕組みとなっています。
通常の上場企業の場合は得られた利益から法人税を支払い、内部留保を残した後に配当として拠出します。
しかし、リートの場合は得られた利益の90%以上を配当として拠出することになります。
つまり、Jリートは得られた利益の殆どを配当金として拠出するため配当利回りが高くなりやすいという傾向があります。
実際、TOPIXの配当利回りは2%程度であるのに対して、Jリートの分配利回りは4%程度となっています。
Jリートが下がってるのはなぜ?
では本題に入っていきます。なぜJリートが下がっているのかという点についてお伝えしていきます。
理由①:日本銀行が金融引き締めに転じている
不動産市場にとって金融政策は最も重要なファクターです。
2010年代は黒田総裁を擁する日本銀行の大規模な金融緩和によって株式市場と不動産市場は大きな追い風を受けて上昇していきました。
しかし、パンデミックによる世界的なばら撒きによって欧米を起点としてインフレが発生しました。
このインフレが日本にも徐々に輸出されて、日本でもバブル期以来となるインフレが発生しています。
日本銀行の金融政策の目的は物価の安定です。日本銀行は目標とする2%のインフレを達成するために植田総裁に変わった日本銀行が徐々に引き締めを実行し始めました。
まず2024年3月にマイナス金利の撤廃とイールドカーブコントロールの廃止、更にETFの購入廃止を決定しました。
つづけて2024年7月には政策金利の0.25%への利上げを実行し、継続して利上げをする構えを見せたことで全世界的に金融市場を混乱に陥れました。
日本のインフレが上昇する中で引き締め懸念があったため2022年から徐々に日本の10年債や30年債の利回りは上昇していきました。
当然、借入コストが増加するのでJリートには大きな下押し圧力となっていきました。
理由②:地銀が債券の損失補填のためにJリートを益出ししていた
次は需給の問題が大きく尾を引いています。日本の地銀はJリートの大きな買い手でした。
しかし、地銀は保有する債券の価格が2022年に大きく下落したことで、大きな含み損を抱えました。
実際、以下の通り円債と外債の含み損が2022年から2023年に大きく膨らんでいました。
投資をしている方ならわかると思いますが、損失と利益は合算することが可能です。
債券の損失を確定させ、それと利益が出ている資産を売却することで節税を行うことができるのです。
この損失とぶつけるための利確を「益出し」といいます。
そのため、Jリートを多く保有し多くの含み益を保有していた地銀によるJリートの益出しが大量に発生したと推定されています。
以下は2022年10月の日経新聞の記事の抜粋です。
不動産投資信託(REIT)市場で、主要な投資主体である地方銀行が売り姿勢を強めるとの警戒が出ている。地銀は積極的な買いでREIT全体の底堅さを演出してきたが、海外金利の急騰(債券価格の下落)で運用全体の含み損が広がるなかでREITは「益出し」の対象になりやすい。
上場株式の株価もそうですが、需給で価格が決定します。今まで大口の買い手であった地銀が売却をしたとなれば大きな下落圧力となっていくのは想像に難くないですね。
理由③:リモートワークの推進によってオフィスビルリートに逆風が吹いている
次にミクロな観点からもJリートの下落要因を説明していきます。
以下は東証リート指数のセクター別の構成比率です。ご覧いただければわかる通り、単独であればオフィス型が最も多い構成比率になります。
総合型の中にもオフィス型は当然組み入れられていますので、全体の30%程度をオフィス型が占めていることになります。
そして、このオフィス型はパンデミックによって大きな打撃を受けました。理由はリモートワークの推進によってオフィスの需要が減少したことが挙げられます。
以下は2021年7月以降の代表的なオフィス型のJリートの株価推移です。東証リート指数よりも悪いパフォーマンスであることがわかりますね。
日本ビルファンド投資法人
ジャパンリエルエステイト投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
いちごオフィスリート投資法人
実際、オフィスビルの空室率は以下の通り跳ね上がっています。そしてさらに2025年に予定されている新規のオフィスビルの供給によって需給の悪化が見込まれています。
Jリートの今後の最新の見通しとは?どこまで下がる?
今まではJリートが下落してきた理由についてお伝えしてきました。
では肝心の最新の見通しについて上記をもとに考察していきたいと思います。
日本銀行の利上げは始まったばかり
日本銀行は2024年7月にゼロ金利を脱出して0.25%の利上げを実施しましたが、これは序章に過ぎません。
以下はロイターの記事ですが、植田総裁は会見で追加利上げをしていく方針を明言しました。
日銀の植田和男総裁は31日、金融政策決定会合後の記者会見で、今後も経済・物価情勢が見通し通りに推移していけば追加利上げしていく方針を示し、政策金利について2006年からの前回の利上げ局面のピークである0.5%が「壁」になるとは「認識していない」と明言した。
つまり、今後も利上げを実行していくということです。金融引き締めが強化されていくということなので不動産市場には継続的に下押し圧力がかかっていきます。
とはいえ次にお伝えする要因により日銀の引き締め自体は長くは続かないと考えています。
世界的な景気後退が迫ってきている
グローバル化が進んだ現代にあっては米国経済が冷え込むと、特に日本や欧州などの西側諸国も引きずられる形で景気が悪化します。
消費大国である米国の需要が沈むと日本の輸出企業なども大打撃を被るからですね。
2021年後半から始まったインフレと2022年からの高金利によって、いよいよ米国でも景気後退が迫ってきています。
実際、以下の通り失業率は跳ね上がる前の水準まできています。
失業率が上昇すると、全体の所得が低下して企業収益も悪化していきます。遅くとも2024年末頃には不況になることが想定されています。
日本にも2024年末から不況が訪れる確度が高く、日銀は利上げを停止せざるを得ない状況に追い込まれることが想定されます。
景気後退が顕在化するころには利上げの停止または利下げが織り込まれはじまるのでJリートの価格が反転していく可能性が高くなります。
地銀の益出しも一服することが想定される
地銀が抱える債券の損失と相殺するためのJリートの益出しも今後は収束していくことが考えられます。
理由は景気後退となると金利が下落(=債券価格が上昇)するからです。
景気後退にともなって債券価格が上昇して含み損が解消されるのでJリートの益出しを行う動機が消滅することになります。
オフィスリートは引き続き警戒が必要
上記のように不況による金融政策の転換や需給の改善を期待して、かなりお買い得な状況となっている現段階から仕込み始めるのには好機と考えてもよいでしょう。
ただ、オフィスリートは先ほどお伝えした通り2025年に新規オフィスビルの大量供給が実施されるので厳しい展開が継続することが想定されます。