日本には販売から運用まで一貫して行う独立系の投資信託が数多く存在しています。その中で、最も有名なのは「ひふみ投信」です。
ひふみ投信は2008年から市場平均を大幅に上回る成績を出しており注目が高まり2017年にはカンブリア宮殿にも取り上げられました。
結果として純資産額は急騰して1578億円という規模になっています。
これは、あくまで「ひふみ投信」単体で「ひふみプラス」や「ひふみ年金」を加えると7000億円の運用資産規模となっています。
大衆向けの商品を拡充し、その運用資産規模は非常に大きなものになっております。
直近は米国のFRBによる金融引き締め実行フェーズにより運用は困難をきたしており、純資産総額は減少傾向です。
筆者も2016年から2017年に「ひふみ投信」に投資をして大きな利益を獲得しました。
しかし、現在は後で紹介する「ある理由」によって資金を引き揚げました。
今回はそんな 「ひふみ投信」について以下の点を中心にお伝えしていきたいと思います。
今回のポイント
- ひふみ投信はどのようなファンドなのか?
- ひふみ投信の過去の成績とは?
- 何故、ひふみ投信から資金を引き揚げたのか?
ひふみ投信の考察をふまえて、2024年時点で長期的な資産形成を行う上で筆者的におすすめのファンドをランキング形式で纏めていますので参考にしていただければと思います。
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Contents
「ひふみ投信」や「ひふみプラス」ってどんな投資信託?何が違うの?
まずは「ひふみ投信」と「ひふみプラス」の違いについて説明していきたいと思います。
「ひふみ投信」は直販型
そもそも「ひふみ投信」ってどのような投資信託なのかという点についてお伝えしていきたいと思います。
普通の投資信託が証券会社を経由して購入することが出来ますが、ひふみ投信は直販形式を取っている独立系投資信託となります。
ひふみプラスとは?
あれ、けど楽天やSBIでも「ひふみプラス」という形態の投資信託が販売されてるよね?という疑問もあるかと思われます。
「ひふみプラス」は直販型ではなく、証券会社や銀行といった金融機関で販売されている投資信託です。
気になる成績は「ひふみ投信」とマザーファンドが一緒なのでまったく同じになっています。
しかし、どうせ大切な資産を預けるのであれば、ひふみ投信に預け入れた方がメリットがあります。この点については後程詳述します。
以下では成績が同じなので「ひふみ投信」で統一してお伝えしていきたいと思います。
ひふみ投信設立者の藤野英人氏
ひふみ投信はレオス・キャピタルワークス社によって運用されているのですが、同社を設立した人こそ、藤野英人氏です。
藤野氏は中小小型並びに成長株ファンドの運用で25年の経歴があります。まず社会人としての経験は現在の野村アセット・マネジメント株式会社から始まります。
そこで中小型株の運用部門に配属され、ここで中小企業の経営者の話を聞くにつれて経営者精神が養われたみたいです。
入社6年を経過した時には更に腕に磨きをかける為、現在のJPモルガンアセットマネジメント社に転職。
その後、ITバブルの追い風もあり1998年の32歳の頃にはカリスマと呼ばれておりました。
ドットコムバブルの頃に運用に携わっているとは、本当に運が良い方ですよね。
世界屈指のベンチャーキャピタリストから弟子にならないかとの誘いもあったそうです。
しかし、現在の日本の投資信託の質の低さを嘆き、「国民にとって理想的な投資信託を作ろう」と一念発起し2003年にレオスキャピタルを創設しました。
投資家の為ではなく、運用会社の為に存在する投資信託に危機感を持っていたという点は金融庁長官の森氏と同じ危機感を持っていたんですね。
日本人が適切な資産運用を行うことは大きな課題なので、この課題に取り組むヒーローといった感じですね。
また著書として、なんと21冊も執筆されてます。
まだ上がる?ひふみ投信の運用方針
運用方針については、ひふみ投信自信が謳っていることを管理人がかみ砕いて説明していきたいと思います。
主得意の超小型株の比率が著しく減少している
元々藤野氏が超小型株の成長ファンドの運用で経験を培ってきました。そのため、運用開始直後は超小型株の比率が非常に高かったのです。
しかし、以下をご覧いただければわかる通り、現在は超小型株は非常に小さい比率になってしまっています。
変わって大型株や海外株の比率が増えています。この傾向は2017年以降顕著になっていますね。
原因は最初に触れた「カンブリア宮殿」で取り上げられたことによる資金の急激な流入にあります。
超小型株は流動性が低いので大きな資産を運用することはできず、大型株を購入していくしかなくなってしまっているのです。
結果として後続でお伝えしますが、以前のような高いパフォーマンスは出せずに日経平均と同等の成績に最近はなってしまっています。
「ひふみ投信」の組入上位銘柄10位
では、2024年8月末時点の「ひふみ投信」の構成上位銘柄について見ていきましょう。
AI関連銘柄として話題のエヌビディアとマイクロソフトが組み入れられているのが特徴的ですね。
ただ、構成上位銘柄は全て大型銘柄ですね。また組入銘柄数も176銘柄となっており殆ど日経平均と変わらないのではないかという構成になっています。
筆者は過去からひふみ投信のポートフォリオを観察していますが、引き続き大型株偏重のポートフォリオですね。
これまでのポートフォリオの推移が以下ですが、常に大型株が上位銘柄です。
2024年6月末 | 2024年2月末 | 2023年12月末 | 2023年9月末 | 2023年6月末 | 2023年3月末 | 2022年11月末 | 2022年8月末 | 2022年3月末 | |
1 | トヨタ自動車 | トヨタ自動車 | 村田製作所 | 楽天銀行(大型株) | 東京エレクトロン | アドバンテスト | 東京海上ホールディング | ソニーグループ | ソニーグループ |
2 | 三井住友FG | M&A総研ホールディングス | M&A総研ホールディングス | 東京エレクトロン(大型株) | 楽天銀行(大型株) | ソニーグループ | GMOペイメントゲートウェイ | 東京海上ホールディング | オリエンタルランド |
3 | TDK | NVIDIA CORPORATION | 三菱重工業 | 三菱UFJフィナンシャル(大型株) | 東京海上ホールディング | ディスコ | 日本電信電話 | オリエンタルランド | 東京海上ホールディング |
4 | M&A総研ホールディングス | 村田製作所 | マイクロソフト | ソニーグループ(大型株) | ソニーグループ(大型株) | NTT | 三菱UFJフィナンシャル | 味の素 | 三菱UFJ |
5 | 第一生命 | 三菱UFJフィナンシャル | NTT | 日本電信電話(大型株) | 三菱UFJフィナンシャル | 東京海上ホールディング | 味の素 | 川崎汽船 | INPEX |
6 | ソフトバンクグループ | MICROSOFT | TOWA | 三井住友フィナンシャルグループ | 日本電信電話 | インターネットイニシアティブ | インターネットイニシアティブ | 東京エレクトロン | NTT |
7 | NVIDIA | ニトリホールディング | 三菱商事 | インターネットイニシアティブ(大型株) | インターネットイニシアティブ | GMOペイメントゲートウェイ | 伊藤忠商事 | IHI | マイクロソフト |
8 | オリックス | ダイキン工業 | GMOペイメントゲートウェイ | トヨタ自動車 | 第一生命ホールディングス | 味の素 | アドバンテスト | インターネットイニシアチブ | 住友貴金属 |
9 | DMG森精機 | 味の素 | 任天堂 | MICROSOFT CORPORATION | GMOペイメントゲートウェイ | 三菱UFJフィナンシャル | ディスコ | 日立製作所 | トヨタ自動車 |
10 | 味の素 | GMOペイメントゲートウェイ | 日立製作所 | メルカリ | SMC | 伊藤忠商事 | MICROSOFT | 日揮 | 三菱商事 |
2021年時点の1位銘柄はマイクロソフトでしたが、現在は圏外まで落ちていますね。そのかわりAIバブルの恩恵をうけたNVIDIAが上位に組み込んでいます。
その他銘柄入れ替えはありますが、常に時価総額が大きい企業をホールドしています。
大企業中心のポートフォリオ
皆さんが知っている大企業の他に中小型株も組み入れられています。ただ、得意とする超小型株は上位には入っていないことは残念ですね。
ポートフォリオに組み入れられている銘柄は「グロース株」と「バリュー株」投資をバランス良く織り交ぜているという感じです。
銘柄選定にあたっては財務諸表の分析である定量分析は勿論おこなっています。
加えて、実際に足を使って投資先候補の企業の経営者との面談や、将来的なビジョンの精査、製品に対する購買者の声など足を使って企業の有望さを考えて投資判断を下しているそうです。
あと、構成銘柄数は176銘柄と非常に多岐にわたります。日経平均ですら225銘柄で構成されています。
つまり、あまりにも分散されすぎてて、「ひふみ投信」の値動きは相場と連動しやすい性質になっているのです。
守りながら増やす運用方針
基準価格の変動に伴う、投資家の不安感を出来うる限り軽減しようということをポリシーとして掲げています。
国民の為の投資信託を掲げて創設したこともあり、投資家に配慮した運用を行っているということですね。
実際にmorning starが発表している「ひふみ投信」のリスクリターン表をご覧ください。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 20.75% | 2.61% | 9.93% | 10.33% |
標準偏差 | 8.69 | 12.06 | 13.96 | 14.35 |
シャープレシオ | 2.39 | 0.22 | 0.71 | 0.72 |
リターンは簡単ですね、どれだけ資産が増えたかなので簡単にリターンを幾何平均して求めることが出来ます。
3年平均利回りが2.61%な点が型株偏重になった影響を表していると思います。
さて、損失を蒙ってないのにリスクってなんなの?
ということですが、これは標準偏差と言われるものです。価格の変動率が高いか低いかを表す指標です。
上の図を見て頂くと、最終的にファンドAもファンドBも投資リターンは同じです。
しかし、ファンドAが上下変動が激しいのに対して、ファンドBは堅実に着実に基準価格を上げていっています。
この二つのファンドの場合、リスクはファンドBの方が圧倒的に低く、このような成績をひふみ投信は目指しているのです。
現状「ひふみ投信」は先進国株式には若干優っているもののローリスクハイリターン気味になっているのは由々しい点ですね。
この点については成績欄で詳しくお伝えします。
現金比率の調整機能
またこれは大々的にひふみ投信が謳っているわけではないですが、私は現金比率が50%まで膨らませることが出来る点も魅力に感じています。
つまり、相場が高騰してバブル的な状況であれば現金比率を高めて、中小小型のバリュー株に資金を移すことにより、
相場の大幅な下落時を乗り切ることが出来ると考えられるからです。
実際にバフェットも相場が天井圏にあるときは現金比率を高めている為、相場下落時のショックを抑える工夫がなされているんですね。
通常の投資信託であれば、現金比率はかなり低く抑えるように縛られているので、このような柔軟な運用はできません。
プロ中のプロである藤野氏を中心とした運用チームが相場の温度を日々モニタリングして現金比率を調節し不測の事態に備えてくれるのは安心感があります。
このような運用の自由度の高さがひふみ投信の魅力の一つであると言えます。
ひふみ投信の運用成績と筆者が解約した理由
ではひふみ投信の運用実績について解説していきたいと思います。
ひふみ投信の長期(チャート)の実績は素晴らしい
まず一番重要な運用実績です。以下はひふみ投信の運用開始からのリターンを日経平均株価と比較したものです。
2013年以降で日経平均が+160%になっている中、ひふみ投信は+420%になっており大幅にオーバーパフォームしています。
実際に以下の各年毎のリターンをご覧ください。2017年までは非常に堅調に推移していますね。
2021年からずっとTOPIXをアンダーパフォームしています。2022年は特にひどいですね。
TOPIXが大幅下落しているリーマンショックの2008年と2011年についてもプラス、または小さなマイナスに抑えているところは最も評価できる点だと思います。ただ、2018年と2022年はTOPIX以上の大幅な下落となってしまっています。
こんなドローダウンがあっては、資産は増えていきません。
何故でしょうか?
実はこの理由が筆者が2018年に入る前に「ひふみ投信」を解約した理由となっています。次項で詳しくお伝えいたします。
筆者が「ひふみ投信」を解約した理由
以下は直近5年間の「ひふみ投信」と「日経平均」の値動きの比較です。
青:ひふみ投信
赤:日経平均
近年2018年-2021年に関しては日経平均と殆ど同じ動きになってしまっています。
そして過去5年間だと日経平均に敗北を喫しています(ちなみに2022年は年初から下落に弾みがついています)
2024年の7月からの大きな下落うでも20%近く被弾しており値動きが激しいです。
ひふみ投信は最高値更新で藤野英人氏はフェイスブックで成績を誇っていましたが完全に市場要因です。
日経平均が上昇しているのですから、大型株に分散投資をしている「ひふみ投信」が上昇するのは当たり前ですからね。
日経平均に負けているのでアクティブ投信としては不甲斐ない成績といえるのです。
注意してほしいのは、上記チャートの日経平均は配当金を出した後の金額です。
配当金を加味するとさらに「ひふみ投信」との差はさらに大きく広がります。
この原因は最初にも述べたカンブリア宮殿で宣伝されたことに起因します。
2017年2月にカンブリア宮殿に特集されたことで人気が殺到したことにあります。結果的に2017年から純資産が急拡大しています。
資産規模が大きくなるまでは、藤野氏が得意としていた超小型株投資を行うことができなくなってきました。大きすぎる資金を魅力的な超小型株だけで運用できなくなったからです。
大型株は日経平均と同様の値動きをする傾向にあるので、最近の「ひふみ投信」は日経平均と連動する値動きになっているのです。
ひふみ投信が魅力的だったのは超小型割安成長株投資で下落耐性強く尚且つ高いリターンの獲得が見込めたからです。
現時点の「ひふみ投信」は規模が大きすぎて投資する妙味を感じられなくなり解約を2017年末に行いました。結果的に判断は間違っていなかったという結果になっています。
やはり規模が大きくなりすぎると、小型株で運用しようと思っても流動性がなく、取引が成立しづらいなどありますからね。
身動きの遅いクジラにハイリターンを求めるのは無理なので、せめて株価指数に勝ってくれれば良いと思います。
しかし、TOPIXやS&P500にも負けているので、かなり厳しいですよね。インデックスの方が遥かにマシではないかということです。
ひふみ投信のように定期的に大きな下落をこうむりながら長期投資を実践するのは難しいです。
相場の動きに関係なく安定して高いリターンを獲得するのであればヘッジファンドという選択肢が非常に魅力的になってきます。
以下では筆者が投資している下落を回避しながら安定して20%程度の高いリターンが獲得できるファンドを含めてまとめていますので参考にしていただければと思います。
コラム:ひふみプラスとS&P500指数の値動きも比較
「ひふみ投信」は全世界の株式も対象にしているので、代表的な株価指数である米国のS&P500指数と、全世界株式と比較したものが以下となります。
青:ひふみプラス
赤:S&P500指数
緑:eMAXIS全世界株式
圧倒的に負けており、比べるまでもないという残念な結果となっていますね。
あまり、ひふみ投信に投資するメリットを感じません。またSP500や全世界株式も定期的に大きな下落を被ります。
長期的的に安定した資産を築くのであれば、さきほどお伝えしたヘッジファンドという選択肢が魅力的になってきます。
ひふみ投信の今後を予想!景気後退と円高調整を控えて非常に危ない状況!
ひふみ投信は他のアクティブ型の投資信託を圧倒する成績を出してきていました。
しかし、直近は日経平均の下落にもろに影響される形で大きく基準価格を落とす局面が増えてきています。
理由は今までは市場に影響を受けにくい小型株・超小型株に投資をしていました。
しかし、直近は殆どを市場平均の影響を受けやすい大型・中型銘柄で占められています。
すでに大型株の比率は88%となっており、銘柄選定という領域の投資ではないように思えます。
2024年7月時点では、直近5年間は日経平均に劣った成績となっています。本来の下落体制が強いというファンドの特性を失いつつあります。
テレビで放送され、あまりにも人気が出過ぎたため、本来の小型・超小型株運用ができなくなっているのです。
結果として今後TOPIXがどうなるかが、ひふみ投信の今後の結果に影響します。
こうなってくると「ひふみより手数料の安いTOPIX連動型ETFの方がいいのでは?」という疑問も生まれてきます。
TOPIXや日経平均は円建の米国株連動する傾向にあります。
つまり、米国株とドル円の行く末が日経平均、ひいては「ひふみ投信」の今後を占うことになります。
まず世界の株式市場の60%以上を占める米国株についてなのですが、2021年末からの高金利とインフレの二重苦によって景気失速の兆候が加速しています。
そして、実際失業率は2024年の7月時点で急激に上昇する構えをみせており景気後退がすぐそこまで迫っています。
今後、景気後退が見込まれており企業業績の悪化にともなって株価が大きく下落する蓋然性が高まっています。
実際に米国起業の利益予想は下落しつづけており、2024年7月以降下落に転じています。
また、ドル円も今まで日米金利差の拡大にしたがって上昇してきましたが、景気後退となると米金利が低下するので円高調整になります。
実際に既にドル円は162円から146円に急激に円高が進行しています。さらに日銀が引き締めに転じたことも大きな影響を与えています。
2024年7月に日銀は0.25%まで金利を引き上げましたが、今後も継続して金利を引き上げる構えを見せています。
つまり、ここからは米国株は下落して、ドル円は下落する可能性が高いということを意味しています。
こうなると日経平均が大きく下落するのは火をみるより明らかですね。
今後、日経平均に連動しながらも劣後する「ひふみ投信」に投資を行う旨味は低くなってきています。
筆者が資産形成の核としてポートフォリオを担っているのはヘッジファンドです。
ヘッジファンドは下落相場でも徹底的に収益機会を狙って安定したリターンを積み上げています。
相場が下落した時の下落耐性を備えつつ年率10%程度の利回りをだす投資先については、以下にランキング形式でまとめていますので参考にしてみてください。
まとめ
成長株投資(グロース投資)でありながら、資産価格を極力下落させることなく安定的な右肩上がりの運用成績を実現しており、非常に優秀なファンドということができます。
しかし、直近は大型株の組み入れ銘柄が大きいこともあり、TOPIXと同等以下の成績となっており、以前ほど投資妙味がなくなってきています。
下落耐性を備えつつ、安定した成績を出すファンドは他にも数多存在しています。